第1回PATinKyoto京都版画トリエンナーレ2013

The First PATinKyoto, The Print Art Triennale in Kyoto 2013

開催概要
2013年2月23日(土)~3月24日(日)
会場:京都府 京都市美術館 本館1階
時間:9:00~17:00月曜日休み

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出品作家

主催:
「PATinKyoto 京都版画トリエンナーレ」実行委員会
京都市美術館
京都新聞社
NHK京都放送局

後援:
京都府
京都府教育委員会
京都市教育委員会
京都商工会議所
KBS京都
α-STATIONエフエム京都

特別助成及び一般助成:
一般財団法人 ニッシャ印刷文化振興財団
公益財団法人野村財団

受賞者

第1回PATinKYOTO

大賞

入江明日香

醍醐枝垂桜 daigo-shidarezakura
ミクストメディア mixed media
銅版画コラージュ etchingcollage
158×516cm
2012

優秀賞

大西伸明

Sitoroen
型取りcasting
樹脂、アクリル、ウレタン
resin, acrylic, urethane
可変 not fixed
2013
eda
型取りcasting
樹脂、アクリル
resin, acrylic
2013
denkyu
型取り casting
アクリル樹脂、金属等
acrylic resin, metal, etc
15×6.5×6.5cm
2013

優秀賞

八木良太

時間視差(版ズレ)2
Time Parallax (Misregistration)
シルクスクリーン
Silkscreen printing
ベランアルシュ
Velin Arches
66×50.5cm×8点
2013
時間視差(版ズレ)5
Time Parallax (Misregistration) 5
シルクスクリーン
Silkscreen printing
ベランアルシュ
Velin Arches
66×50.5cm
2013
時間視差(版ズレ)
Time Parallax (Misregistration)
シルクスクリーン
Silkscreen printing
ベランアルシュ
Velin Arches
66×50.5cm×2
2013
.
時間視差(静物画)
Time Parallax (Still life)
シルクスクリーン
Silkscreen printing
ベランアルシュ
Velin Arches
66×50.5cm×4
2013
時間視差
Time Parallax
ビデオ
Video
2012-2013
遠い時間、近い時間
Distant time, Near time
ミクストメディア
Mixed media
レコード、鉄道模型、モーター
Record, Model railroad, Motor
Φ305×150mm
2008

ニッシャ印刷文化振興財団賞

武田史子

紡ぐ季節
Weaving season
エッチング、アクアチント、手彩色
etching, aquatint, hand colouring
銅版画
a copperplate print
50×38.5cm
2012
木洩れ日
The sunlight Filtering through trees
エッチング、アクアチント、手彩色
etching, aquatint, hand colouring
銅版画
a copperplate print
49×37cm
2012
森の音
The sound in the forest
エッチング、アクアチント、手彩色
etching, aquatint, hand colouring
銅版画
a copperplate print
40×28.3cm
2010
.
記憶の道
The road in the memories
エッチング、アクアチント
etching, aquatint
銅版画
a copperplate print
30×20.3cm
2010
伝え継ぐ場所
The place handed down
エッチング、アクアチント、手彩色
etching, aquatint, hand colouring
銅版画
a copperplate print
30.5×20cm
2011
新しい朝
A new morning
エッチング、アクアチント、ww手彩色
etching, aquatint, hand colouring
銅版画
a copperplate print
40.5×27cm
2012

インスタレーション・ビュー

インスタレーション・ビュー

ごあいさつ

周知のように日本の版画は輝かしい伝統を持ち、国際的にも多くの影響を与えてきましたが、近年、さらなる発展の機運を迎えつつあるように思われます。液晶画面の電子の映像が視覚を支配しがちな時代であるからこそ、かえって“刷る”という版画の独自のプロセスの魅力が新たな意味をもって見直されるようになってきたといってもいいでしょう。
2013年に出発する「京都版画トリエンナーレ」は、そうした時代状況にただ受動的に対応するのではなく、より能動的に働きかけ従来にない版表現の可能性を切り開くことを目的とする展覧会です。これまでのトリエンナーレやビエンナーレ形式の版画展で一般的であった公募コンクールとは異なって、出品作家の選定に尖鋭な目と豊富な情報を持った複数のコミッショナーによる推薦制を採用したのも、時代状況と切り結ぶ批評的な視座を重視しようとしたからに他なりません。
このトリエンナーレのもう一つの特色は、各出品作家に10m長の壁面、ないし50㎡の床面積という、比較的ゆったりしたスペースを提供していることにあります。こうした条件によって、シリーズ作品ならではのナラティブな展開が許容され、またインスタレーション的な表現が可能になるという点も、従来の版画展には見られなかった画期的な試みであるに違いありません。
シルクスクリーンのユニットを室内に壁紙のように張り巡らすことで、版画を意想外の環境的空間に結び付けてみせたのは他ならぬウォーホルでした。本展に出品するのは今もっとも旺盛な活動を展開している若手から中堅の21名の作家たちですが、彼らもまたスリリングな未知の可能性が潜んでいるはずの版画の領域に果敢な挑戦をし、私たちをわくわくした興奮へと誘ってくれることでしょう。先端をゆく版画の魅力を京都から世界に向けて発信すべく第一歩を踏み出した本トリエンナーレをお楽しみいただくとともに、今後の歩みにご支援を賜るようお願い申し上げます。

京都版画トリエンナーレ実行委員長 建畠晢

夢見る版画プロセス

たとえば、作曲家が自分の作品を自ら演奏したいと思い、ピアノなど手近な楽器で演奏するとする。ここまでは、さほど珍しいことではないだろう。しかし、それを自らレコード化するとなると、それほどよくあることとは言えまい。まして、自らオルゴールなどのかたちで一種のオブジェ化をはかるとすれば、相当変わり者扱いされること必定だろう。さらに想像をたくましくして、自ら作成したレコードをいくつか用いて、自らDJのように即興的な音作りをしてみせるとすれば、なんともぶっとんだ人と見なされかねまい。
音楽をだしにして、ちょっとした想像を繰りひろげてみたのは、ほかでもない、そういったことどもは、版画では、ごく普通に見いだされるように思われるからだ。たとえば、ある支持体に色を塗る作業、それはいってみれば絵画の創作に当たるだろうが、そこにとどまらず、別の支持体に転写すれば、版画として扱われる。音楽でいえば、曲の創作と演奏と録音が、そこで実現されるといってよい。さらにこの比較を推しすすめて、その版画に、あらためて色を塗るならば、既存のレコードを用いた曲作りともなる。
このように簡単な比較からもわかるとおり、版画を制作・展示するというプロセス、いわば版画プロセスには、ほかの芸術ジャンルでは分断されているプロセスまで包含されている。すなわち、音楽ならば、作曲、演奏、録音というプロセスは、それぞれ独立した作業として扱われるが、一昔前はともかくとして、今日の版画では、一つらなりのものと見なされるのだ。もっとも、こういったからといって、なにも版画を特別扱いしたいわけでもないし、特権化したいわけでもない。むしろ、版画プロセスに含まれる数々の〈あいだ〉に着目したいのである。
もちろん、どのような芸術プロセスにも〈あいだ〉は介在しよう。誰しも認めるのは、創作のプロセスと受容のプロセスとの〈あいだ〉の介在だ。ただし、この〈あいだ〉は、単なる断絶の〈あいだ〉ではない。それは、いわば豊かな〈あいだ〉である。豊かといえるのは、それが、さまざまな差異を生成させる〈あいだ〉だからだ。
なにも特別なことを言いたいのではない。たとえば、作曲と演奏の〈あいだ〉を考えてみよう。なんであれ、名曲といわれる作品には、多様な演奏が存在しつづけ、いまこのときにもどこかで新たな演奏が生起しているかもしれない。あえていうなら、そのように多様な演奏を触発しつづけるからこそ、名曲なのである。ここで差異というのは、たとえばそのような多様な演奏のあいだの異なりをいう。
さきほど、版画を特別扱いしたいわけでも特権化したいわけでもないと言ったのは、いかなる芸術プロセスにも含まれる、そのような豊かな〈あいだ〉を、版画プロセスもまた共有するからにほかならない。ただ、版画の場合、この〈あいだ〉は、けっして大がかりではないにせよ、ここそこに柔軟なかたちで散在しうるように思われるのだ。
個人的な経験でいえば、ずいぶん以前に、レコードやオルゴールを版画として扱う発想を得て、自分の版画批評に生かしたことがあった。それは、音楽との〈あいだ〉まで、版画プロセスに含みうるという、ひとつの発見でもあった。考えてみれば、なんらかの創案が版に刻みこまれるように、音楽もまた、レコードやオルゴールに刻印されるのである。さらにいえば、刻印される支持体のあいだの異なりも、そこに関与してこよう。驚いたのは、氷の盤面が支持体として用いられたときのことだ。それにより再生される音楽は、そのときの温度など、環境により変化するだろう。すなわち、こうして環境との〈あいだ〉をも取りこむことで、作品のありようを変化させるのだ。
メディアとの〈あいだ〉、メディアの〈あいだ〉に対しても、版画プロセスは柔軟な取りこみを、さまざまに示してきた。コピー機やファックス受信機を用いた作業が、創案豊かに試みられてきたことは、いまなお記憶に新しい。また、比較的新しいところでは、プリンターを介在させる試みも、目に付くようになった。プリンターを使うからには、当然、コンピュータとの〈あいだ〉、コンピュータの作画方式の〈あいだ〉も問題となるだろうし、写真画像を取りこむときには、写真との〈あいだ〉、画像スキャンするときには、スキャナとの〈あいだ〉など、さまざまな〈あいだ〉をどのように処理するかという問題が、版画プロセスに直結し、版画の創造性へと連動する。
刻印される支持体も、素材による異なり、立体か平面かの異なりなどにより、版画プロセスの展開にさまざまな可能性を開くことだろう。個人的な感想としては、各種の透明素材への刻印は、新たな感性を示唆するようにさえ思われるほどだ。
さらには、どのような環境や空間に展示され、使用されるかという違いも、大きいはずだ。版画といえば、サイズ的に小さめのものという固定観念が、おおむね一般に共有されていたように思われる。しかし、そのような固定観念を打破しようとする試みも、粘り強く行なわれてきた。そういった試みが積みかさねられてきたこともあってか、今回、京都版画トリエンナーレでは、一人一人の作家に挑発的なまでに大きな空間が用意されると聞く。このような大きな空間への展開をも、版画プロセスの一環として取りこめるかどうか。さらにいえば、版画プロセスのまわりに広がるはずの時空をも、版画プロセスの一環として取りこめるかどうか。そういったこともまた、現代芸術としての版画にとって、試金石となるはずだ。
いずれにせよ、版画プロセスに含まれる数々の〈あいだ〉、版画プロセスに取りこまれる数々の〈あいだ〉は、ああしようかこうしようかと考えさせる、ときとして迷いと不安に満ちた〈あいだ〉であるかもしれない。しかし、創造性へと開かれるものであるかぎり、それらはあくまで夢見る〈あいだ〉なのである。

 京都版画トリエンナーレ実行副委員長 篠原資明

Vice Chairman of the Committee of PATinKyoto,
The Print Art Triennale in Kyoto 2013
SHINOHARA Motoaki

構成 「PATinKyoto 京都版画トリエンナーレ」実行委員会

委員長
建畠 晢(京都市立芸術大学長・美術評論家)

副委員長 
篠原資明(京都大学教授・美術評論家)

鈴木順也(ニッシャ印刷文化振興財団理事長)

委員 
中井康之(国立国際美術館学芸員・美術評論家)
竹澤恵太(ニッシャ印刷文化振興財団)
吉中充代(京都市美術館学芸課課長補佐)
出原 司(京都市立芸術大学教授・版画家)
長尾浩幸(成安造形大学准教授・美術家)
吉尾隆行(㈱京都新聞COM地域貢献センター長)
井上利丸(NHK京都放送局長)

アドバイザー 
木村秀樹(京都市立芸術大学教授・画家/版画家)
中谷至宏(元離宮二条城事務所学芸員)

事務局代表 谷口宇平

推薦委員会
「PATinKyoto 京都版画トリエンナーレ」実行委員会によって選出された、
全国の批評家、美術館学芸員、研究者、ジャーナリスト、作家などに、作家1名の推薦を依頼。

推薦委員 滝沢恭司(町田市立国際版画美術館学芸員)
光田由里(渋谷区立松涛美術館学芸員)
水沢 勉(神奈川県立近代美術館長)
石川健次(元毎日新聞記者・東京工芸大学教授)
太田垣實(美術評論家・大阪成蹊大学芸術学部教授)
奥村泰彦(和歌山県立近代美術館教育普及課長)
黒崎 彰(版画家)
吹田文明(版画家)
岩渕貞哉(『美術手帖』編集長)
野田哲也(版画家)
東谷隆司(インデペンデントキュレーター)
清水 穣(批評家・同志社大学准教授)
松山龍雄(雑誌『版画芸術』編集主幹、兼務陶芸誌『炎芸術』編集長)
三脇康生(批評家・仁愛大学教授)
三木哲夫(兵庫陶芸美術館長)
黒川公二(戦後版画史研究)
椹木野衣(美術評論家・多摩美術大学教授)
小松﨑拓男(金沢美術工芸大学教授)
杉野秀樹(富山県立近代美術館学芸員)
山田 諭(名古屋市美術館学芸員)
松尾 惠(ギャラリスト MATSUO MEGUMI +VOICE GALLERY pfs/w)
都築千重子(東京国立近代美術館主任研究員)
神谷幸江(広島現代美術館学芸員)
(順不同)

PATinKyoto 京都版画トリエンナーレの実現にあたりご協力頂きました、企業・団体・個人、各位に厚く感謝の意を表します。

後援
京都府、京都府教育委員会、京都市教育委員会、京都商工会議所、KBS京都 、 α-STATIONエフエム京都

特別助成及び一般助成
ニッシャ印刷文化振興財団、公益財団法人野村財団

協賛
Suntory、SMBC日興証券株式会社、京都中央信用金庫、ダイキン工業株式会社、みずほ銀行、ジーク株式会社、村田機械株式会社、株式会社片岡製作所、京都信用金庫、野村證券株式会社、三菱東京UFJ銀行、明治安田生命保険相互会社、画箋堂、吉忠株式会社、京セラ株式会社、京都銀行、燦ホールディングス株式会社、大宝運輸株式会社、同志社大学、野口建設株式会社、公益社団法人京都染織文化協会、アートゾーン神楽岡
がんこフードサービス株式会社、タカラ物流システム株式会社、株式会社岩野平三郎製紙所、株式会社芸艸堂、株式会社織絵、株式会社聖護院八ッ橋総本店、ゴンノ工機株式会社、日本ギャラリーネットワーク協会、CWAJ現代版画展、有限会社今村由男デザイン室、Gallery PARC、アートスペース虹、アートデアート・ビュー、芦屋画廊、エグザイルギャラリー、ギャラリーアーティスロング、ギャラリー恵風、ギャラリーモーニング、Note Gallery、ギャラリーすずき&Σ、B-gallery、有限会社あーとらんどギャラリー、谷口安平、飯田吉平、田中恒子、田中良示、谷口行平、東中稜代、細見吉郎、松田英夫、佐藤孝悦、浅野勝、宇野洋二、神谷雄績、幸亀一夫、大河内仍美、辰巳彰、田渕正孝、富田正明、中村博人・真由美、藪内眞之、大岡征武、野口桂三、堀江照二、山本寿昭(敬称略)

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