武田史子

Takeda Fumiko

1963 東京都生まれ
Born in Tokyo

1991 東京藝術大学大学院美術研究科修了 修了制作買上賞
M.F.A. Design, Tokyo University of the Arts University purchases prize

1993 第2回高知国際版画ビエンナーレ 入選
The 2nd International Biennale of Prints in Kochi Selected

1994 ミヤコ版画賞展 スポンサー賞 都画廊(大阪)
Award Exhibition Prints Sponsor’s Prize MIYAKO Gallery, Osaka

1995 第3回さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ スポンサー賞
The 3rd SAPPORO INTERNATIONAL PRINT BIENNALE EXHIBITION Sponsor’s Prize, Hokkaido

1997 The Royal Academy Ilustrated a Souvenir of the 229th Summer Exhibition The Royal Academy of Art(ロンドン/イギリス)
The Royal Academy Illustrated A Souvenir of the 229th Summer Exhibition The Royal Academy of Art, London, U.K.

1999 第23回リュブリアーナ国際版画ビエンナーレ 招待出品(スロベニア)
The 23rd Biennial of Graphic Art Ljubliana Exhibition invitation, Slovenia

2000 個展 銅版画展 本間美術館(酒田/山形)
Solo Exhibition, “Exhibition copperplate” Homma Museum, Sakata-city, Yamagata

2001 現代美術選抜展 文化庁・上野の森美術館(東京)
Contemporary Art Exhibition selection Agency for Cultural Affairs/The Ueno Royal Museum, Tokyo

2003 版画・半画・反画─表現と技法─展 練馬区立美術館(東京)
Exhibition representation and techniques Nerima Art Museum, Tokyo

THE 11TH INTERNATIONAL BIENNIAL PRINT AND DRAWING EXHIBITION 2003 R.O.C TAIWAN MUSEUM OF ART(台湾)
THE 11TH INTERNATIONAL BIENNIAL PRINT AND DRAWING EXHIBITION 2003 R.O.C TAIWAN MUSEUM OF ART, Taiwan

2005 Seoul International Prints, Photo & Edition Work Arts Fair(ソウル/韓国)
Seoul International Prints, Photo & Edition Work Arts Fair Seoul, Korea

推薦文

推薦者:都築千重子(東京国立近代美術館主任研究員)

版画は技術革新や社会、実用性との接点をもち続け、時代の思潮と関わりながら、柔軟に変化し、表現の多様化も受け容れてきた。しかし、その適応力は反面、版画の利点であると同時に問題視されるところでもあり、しばしば「版画とは何か」という根本的な問いと向かい合わざるをえなかったところがある。

武田史子は、エッチング(ソフトグランドエッチング含む)、アクアチント、メゾチントを主として、時折手彩色を加える、きわめてオーソドックスな銅版画技法により制作してきた。初期(1990年代)は、イタリア古代都市を思わせる幻想的な風景を描いていたが、近年は物語性は払拭され、植物や静物などのモチーフを取り上げるようになってきている。

技法や技術の面白さの追求に寄りかかり過ぎることなく、あくまでも版を用いた絵の制作を第一に考える版画家である。手を動かし、手と眼で「かたち」を自由に追究しながら、余分なものは消し去り、自分の世界を膨らませ、現実でも空想でもない静かな世界へと結晶化させている。

銅版画のマティエールを活かした黒の諧調が美しく、モノとモノ、モノと空間との緊密な関係とあいまって、白と黒、光と陰の織り成す神秘的な世界を創り出し、まるで時が停まったかのような、非日常的世界を出現させる。

いかに多様な技法があふれ、変化の激しい時代であろうとも、内なる世界との対話から、絵を紡ぎ出すという版画の原点に立脚した絵を制作し続ける武田史子の作品は、混迷する現代に、あらためて版画のもつ重要な一面を気づかせてくれるであろう。それは、時代を超えて人々を魅了し続ける版画の不思議な力でもある。そういう意味でもあえて、古典的な手法で制作を続ける武田史子氏を推薦させていただいた。