高浜利也

Takahama Toshiya

1966 兵庫県生まれ
Born in Hyogo

1990 武蔵野美術大学大学院修士課程修了
M.F.A. Musashino Art University

1999 個展「Bangkok Lotus Project 1998-1999」 シラパコーン大学アートギャラリー(タイ)
solo exhibition, “Bangkok Lotus Project 1998-1999” Art Gallery of the Faculty of Painting, Sculpture and Graphic Arts, Silpakorn University, Bangkok, Thailand

「Grandchildren of HOKUSAI」 Grafikens Hus(スウェーデン)
“Grandchildren of HOKUSAI” Grafikens Hus, Sweden

2001 「VOCA 2001―あたらしい平面の作家たち―」 VOCA奨励賞受賞 上野の森美術館(東京)
“VOCA 2001” 〈Encouragement Prize〉 The Ueno Royal Museum, Tokyo

2003 「井出創太郎「棲家/その光と闇」Piacer d’amor bush〈片瀬〉+高浜利也 Enoshima Project」 旧井出創太郎宅(藤沢/神奈川)
“IDE Soutarou Piacer d’amor bush, Katase+TAKAHAMA Toshiya Enoshima Project” house of Ide Soutarou, Kanagawa

2006 「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2006」 小出の家(十日町/新潟県)
“Echigo-Tsumari Art Triennial 2006” Tokamachi City, Niigata

「VOCAに映し出された現在 ―いまいるところ/いまあるわたし―」 宇都宮市美術館(栃木)
“The Present State of Contemporary Art Selected Works from VOCA”  Utsunomiya Museum, Tochigi

2007 「Show Me Thai ―みてみ☆タイ―」 東京都現代美術館
“Show Me Thai-Mitemi ☆Thai” Museum of Contemporary Art, Tokyo

2008 個展「Private and Public」 アートフロントギャラリー(東京)
solo exhibition, “Private and Public” Art Front Gallery, Tokyo

2011 個展「Railway」 ギャラリーなつか(東京)
solo exhibition, “Railway” Gallery Natsuka, Tokyo

2012 「落石計画第5期(井出創太郎+高浜利也)」 旧落石無線送信所(根室/北海道)
“The 5th Ochiishi Plan” Ochiisi Radio Station, Nemuro City, Hokkaodo

推薦文

併存するダイナミズムとデリカシー

推薦者:石川健次(元毎日新聞記者・東京工芸大学教授)

その剛健な身体を見て、また建築現場で働いていると聞いて、どこか腑に落ちない思いを抱いた。正確に言うと、力感とダイナミズムにあふれる一方で、かゆいところにも手が届くデリケートな配慮の行き届いた作品が、このような風貌、物腰から生まれるのだろうか、と駆け出しの私には半信半疑に思えた。初めて高浜に会ったときの印象である。
それから20年が過ぎ、そうした印象に大差はないけれども、肝心の高浜の仕事はいっそう大きく、豊かに変貌を、革新を刻み続けている。芸術家然に見えなかったのは無理もない。従前の芸術を、とりわけ版画を逸脱、再構築する高浜が、既成に縛られるひよっこの私に腑に落ちるはずはないのである。
出自である銅版画のほか、立体やプロジェクトなど多彩に拡大する自身の表現に触れて、建築や都市、社会へ関心が広がったからと高浜は述べたことがある。さまざまな手法で社会へ介入し、不特定多数の人々にアピールを試みるのである。ワークショップで用いた木材が、参加した子供の何気ない仕草から積み木となり、やがて積み木のインスタレーションへ。やはりこのトリエンナーレに出品している井出創太郎とユニットを組んで続けているプロジェクト「落石計画」も、社会へ介入を試みる典型だろう。
いずれの場合も多かれ少なかれ版画が援用されるほか、体験、見聞した集大成として最終的に銅版画へ帰結するのを見逃してはならない。そこには版画が陥りやすい心情的な狭隘性やジャンルとしての閉鎖性はない。社会への介入、アピールへの関心と行動が、その開放性が、狭隘性や閉鎖性のなかで奇異に映ることはあっても、だ。
造形に関して若干記すと、高浜の作品には定形の形式美をはずした破調の美、たとえば余白の挿入や多用、あるいは非対称、調子っぱずれにも見える線描など日本に固有の作法が静かに内包される。ダイナミズムとデリカシーが多様な身振り、深層に併存する高浜の軌跡に、私は圧倒されっぱなしである。