田中 彰

Tanaka Sho

1988 岐阜県出身
2013 武蔵野美術大学版画専攻卒業
2015 武蔵野美術大学大学院版画コース修了
2016 「樹について」三菱一号館美術館歴史資料室・東京
2017 「project N67田中彰個展」東京オペラシティアートギャラリー4Fコリドール・東京
2018 「旅する木」YUKI-SIS・東京
「Reservoir Kopi」NADiff Window Gallery・東京
2019 「町田芹ヶ谷えごのき縁起」町田市立国際版画美術館・東京
1988 Born in Gifu Prefecture
2013 Musashino Art University JP (BA Fine Art, Painting and Printmaking)
2015 Musashino Art University JP (MA Fine Art, Printmaking)
2016 “Tree Matters” Mitsubishi Ichigokan Museum Archive Room, Tokyo/Japan
2017 “project N 67 Sho Tanaka Solo Exhibition” Tokyo Opera City Art Gallery corridor, Tokyo/Japan
2018 “Travelling Tree “ Gallery YUKI-SIS, Tokyo/Japan
“Reservoir Kopi” NADiff Window Gallery, Tokyo/Japan
2019 “Machida Styrax Japonica” Machida City Museum of Graphic Arts, Tokyo/Japan

推薦文

滝沢恭司(町田市立国際版画美術館学芸員)

田中彰は自然と人間の営みとの関わりを表現してきた作家である。たとえば《木に人を接ぐ》という2017年制作の作品は、自宅近くの那珂川の河口で拾った流木をモティーフにした木版画と、田中自身が世界各地を旅して入手し、自ら焙煎したコーヒー豆をセットにした300点を超えるパーツを「木」をかたどるように設置した作品で、木とコーヒー豆という自然物と人間社会をめぐる大いなる物語を喚起させることをテーマとしている。《コーヒー豆生産国のためのラベル》(2016-17年)はコーヒーの生産国の実情やイメージを木版に刻んで刷ったラベル群で、各国の文化や社会への関心や対話を自然物から引き出すことが目的化された作品だ。また《樹木の航海》(2016-17)は流木を版木として用いた作品群で、それらが漂流するいきさつや流域への想像が刻まれるなかに、人間との関わりのイメージが表されている。東京町田市の芹ヶ谷公園再整備のために伐採が予定されていたエゴノキを根元から掘り起こし、製材して版木として利用した《きのからだをぬけて》や《町田芹ヶ谷えごのき縁起》(2点とも1919年)は、木の成長のほか、子どもたちが木登りして遊んだ記憶や地勢などのイメージを織り込んだ作品だ。《町田芹ヶ谷えごのき縁起》については、田中の構想のもとに、制作に参加した多くの人々が小さな切り株にそれぞれの記憶を刻んだ刷りが画面に散りばめられた共同制作作品であり、自然物から派生する人間の営みの記憶の集積物として示されていた。
こうした田中の仕事は、自然と人間、人間と人間をつなぐことをテーマとして積み重ねられてきたといえる。こうした仕事がコロナ禍において思うように進まなかったことは想像に難くない。しかしコロナ禍ゆえに精神的な「つながり」への欲求が高まっている状況に、あるいは地球環境への危惧が高まっている状況に、如何なる手法で自然と人間を、そして人間と人間をつなぐ作品を生み出していってくれるのか、田中の仕事への期待は高まるばかりだ。