鈴木智惠

Suzuki Tomoe

東京都生まれ
Born in Tokyo

2011 武蔵野美術大学造形学部通信教育課程版画コース 卒業
B.F.A. Musashino Art University

第88回 春陽展 奨励賞 国立新美術館(東京) [’14 受賞] The 88th Shunyo-kai Art Exhibition Prize The National Art Center, Tokyo [’14 Prize]

第8回 高知国際版画トリエンナーレ展(高知) [‘14] The 8th Kochi International Triennial Exhibition of Prints, Kochi [‘14]

2012 第8回 大野城まどかぴあ版画ビエンナーレ 大野城市長賞(福岡)
The 8th Print Biennale Madokapia Onojo Prize, Fukuoka

個展「鈴木智惠展」 ガレリア・グラフィカbis(東京) [‘14] Solo Exhibition ”Tomoe Suzuki” Galleria Grafica bis, Ginza, Tokyo [‘14]

2013 第12回 南島原市セミナリヨ現代版画展 長崎県知事賞 ありえコレジヨホール(長崎) [‘14年受賞、‘15年受賞] Seminario Print Exhibition 2013 Prize Arie Collegio Hall, Nagasaki [’14 Prize, ’15Prize]

Small Works 2013 ガレリア・グラフィカ(東京) [‘15] Small Works 2013 Galleria Grafika, Ginza, Tokyo [‘15]

アワガミ国際ミニプリント展2013 優秀賞 阿波和紙産業会館(徳島)
Awagami International Miniature Exhibition 2013 Excellence Prize The Hall of Awa Japanese Handmade Paper, Tokushima

2014 第3回 FEI PRINT AWARD 大賞 FEI ART MUSEUM YOKOHAMA(神奈川)
The 3th FEI PRINT AWARD Grand Prize FEI ART MUSEUM YOKOHAMA, Kanagawa

第59回 CWAJ現代版画展 選考委員賞 東京アメリカンクラブ(東京)
The 59th CWAJ Print Show Contemporary Japanese Prints Selection Committee Award-Prize Tokyo American Club

第82回 日本版画協会版画展 奨励賞 東京都美術館(東京)
The 82th Japan Print Association Exhibition Prize Tokyo Metropolitan Art Museum

2015 個展「鈴木智惠 版画展」 Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi(東京)
Sole Exhibition ”Tomoe Suzuki Print Exhibition” Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi, Tokyo

推薦文

推薦者:金澤毅(美術批評家)

鈴木智惠は一種のマルチタレントかもしれない。

本人は美大の版画科を卒業しているが、現職は菓子職人であり、ファッションデザイナーであり、お針子などを兼ねつゝ、一番多くの時間を費やしているのは版画制作である。彼女のリトグラフ作品を見て誰もが気付くことは、モチーフは常に女性の衣服であり、写真などとは違った強烈な実在感がそこにあるということである。

武蔵野美術大学通信学部で基本から版画を学び、8年かけて卒業しているが、その長期に亘る学業に無駄はなかった。多少スタートが遅れたとはいえ、発表を繰り返すごとに反響を呼び、今日では各地の版画コンペで知られた存在となってきた。

鈴木智惠の作品の特色は、まず最初のプロセスとして自作のオリジナルファッションとなる女性服を制作することである。一つとして同じものがない婦人服は実用品とはいえ、まさしく独創性と造形性をもった作品である。作家はあえて写真から版画制作をスタートすることなく、発注者に渡す直前に、質感のある自作ドレスを背後の空間と共にていねいにドロー(線描)している。それは繊維という素材による「着るもの」ではあるが、版画制作者としてはまたとないモチーフでもある。これから「着衣」として新しい主人を持つであろう「作品たち」との決別の意味を込めて手離す前に制作に打ち込むと作家は述べている。

こうしたプロセスを経て完成した作品は、匿名の人格像をもった気品と存在感を見るものに与える。古来西欧美術においては、画家も彫刻家も人体表現の場において、ドレープの多彩な表情をどのように見せるかで苦労してきた。衣服は単に人体の保護や保温のためだけではなく、ひとの社会的立場や個性や状況を示す重要な記号でもあった。

鈴木智惠の作品はすべて単体で空間の中に屹立し、余すところなく全体像を見せているが、人間不在のままで達成した優れた人間表現の名作ではないかと思われる。