尾崎 森平

Ozaki Shinpey

1987 宮城県仙台市生まれ
2006 岩手大学 入学
2009 企画展「UNBALANSE BASE-東北とアイデンティティ-」企画(旧石井県令邸・岩手)
2010 岩手大学 卒業
2012 「Paintings 2012 – 本田 健、小野嵜 拓哉、濱 千尋、尾崎 森平 -」(SARP・宮城)
2013 「GEISAI#18 」出展(東京都立産業貿易センター・東京)
「Paintings 2013 – 本田 健、小野嵜 拓哉、濱 千尋、尾崎 森平 -」(SARP・宮城)
2014 「アートフェスタいわて2013 – 岩手芸術祭受賞作品・推薦作家展+岩手県美術選奨受賞者作品展-」 (岩手県立美術館・岩手)
「シグセレクト(Cyg SELECT)」(Cyg art gallery・岩手)
「Autumn Group Show」(深川番所ギャラリー・東京)
2015 「1462 days – アートするジャーナリズム」(河北ビル5F-9F・東京)
2016 「VOCA 2016 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち」(上野の森美術館・東京)
個展「DRY EYE」(ターンアラウンド・宮城)
「2016年のIMAー岩手の現代美術家たちー」(岩手県立美術館・岩手)
2018 「アートフェスタいわて2017- 岩手芸術祭受賞作品・推薦作家展+岩手県美術選奨受賞者作品展-」 (岩手県立美術館・岩手)
個展「Lonely Planet」(MORIOKA第一画廊 + Cyg art gallery ・岩手)
2019 「Tricolore2019―中村潤・尾崎森平・谷川桐子展」(ときの忘れもの・東京)
個展「1 9 4 2 0 1 9」(RED AND BLUE GALLERY・東京)
2020 個展「N.E.blood 21 vol.73 尾崎森平展」(リアス・アーク美術館・宮城)
個展「1 9 4 2 0 2 0」(ターンアラウンド・宮城)
Born in 1987. From Sendai City, Miyagi, Japan
Graduated from Iwate University in 2010.
2009 “UNBALANSE BASE -Tohoku and (its) Identity-” at Kyu-Ishiiken Reitei, Iwate, Japan. Organizer and participant.
2012 “Paintings 2012 – Takeshi Honda, Takuya Onosaki, Chihiro Hama and Shinpey​ Ozaki -” at SARP, Miyagi, Japan. Participant.
2013 “GEISAI#18” at Tokyo Metropolitan Industrial Trade Center, Tokyo, Japan. Participant.
“Paintings 2013 – Takeshi Honda, Takuya Onosaki, Chihiro Hama and Shinpey​ Ozaki -” at SARP, Miyagi, Japan. Participant.
2014  “Art Festa Iwate 2013” at IWATE MUSEUM OF ART, Iwate, Japan. Participant.
“Cyg SELECT” at Cyg art gallery, Iwate, Japan. Participant.
“Autumn Group Show” at Fukagawa bansho gallery, Tokyo, Japan. Participant.
2015 “1462 Days: Art and Journalism since 3.11” at Kahoku Building 5F-9F, Tokyo, Japan. Participant.
2016  “VOCA 2016: The Vision Of Contemporary Art – featuring young painters and artists” at The Ueno Royal Museum, Tokyo, Japan. Participant.
“DRY EYE” at Gallery TURNAROUND, Sendai, Japan. Solo exhibition.
“IMA in 2016 -Contemporary Artists of Iwate-” at IWATE MUSEUM OF ART, Iwate, Japan. Participant.
2018 “Art Festa Iwate 2017” at IWATE MUSEUM OF ART, Iwate, Japan. Participant.
“Lonely Planet” at MORIOKA daiiti gallery + Cyg art gallery,Iwate, Japan. Solo exhibition.
2019 “Tricolore2019-Megu Nakamura, Shinpey Ozaki, and Kirico Tanikawa” at TOKI-NO-WASUREMONO, Tokyo, Japan. Participant.
“1 9 4 2 0 1 9” at RED AND BLUE GALLERY, Tokyo,Japan. Solo exhibition.
2020 “N.E.blood 21 vol.73 Shinpey​ Ozaki ” at The Rias Ark Museum of Art, Kesennuma, Japan. Solo exhibition.
“1 9 4 2 0 1 9” at RED AND BLUE GALLERY, TURNAROUND, Sendai, Japan. Solo exhibition.

推薦文

尾崎森平の「版」 –「居抜き」の世界を生き抜くために

高橋しげみ(青森県立美術館学芸主幹)

2カ月前までコンビニエンスストアだった建物に、つい最近ラーメン屋が開店した。ガラス張りの正面や店の奥に長く伸びるカウンター席は、以前の建物の作りをそのまま利用しているようだ。セルフサービスの水が置かれているのは、かつてコーヒーマシーンが設置されていた場所だったか。ラーメン屋は既存のコンビニという型に適応し、それを利用しながら営まれている。このように内装や設備、什器等を残したまま、売買や賃貸に供される建物を、不動産業界では「居抜き物件」と呼ぶのだという。人間が居ないこと、即ち「居」が抜かれていることに由来すると言われる「居抜き」という言葉を、筆者は、本展への出品作の構想(2021年8月時点)を伝える尾崎森平からのメモで初めて知った。そのメモには、「コンビニエンスストアの店舗の居抜きが繰返される姿を“資本主義のシステムに於ける版表現”として、それを版画で制作する入れ子構造の連作」と記されている。消費社会を象徴するコンビニエンスストアの建物や什器といったハードウェアが、都市の激しい新陳代謝の中で、人間不在のまま次々と転用され、一つの型として生き延びる様を、資本主義のシステムそのものが生み出す「版表現」とみなし、その光景を、「版画」というそれ自身資本主義と密接に結びついた複製技術の一つで再現する。この構想は、複製技術が生み出すものの画一性、反復性といった属性と、資本主義という私たちを支配する経済的システムとの関連について思考しながら、「版」に対してメタレベルの視座から取り組むこれまでの作家の姿勢の延長上にある展開であった。

仙台市に生まれ、同市を拠点に制作活動を続ける尾崎の絵画には、田んぼの中に忽然と現れるラブホテル、車道沿いに立つコンビニの店舗や量販店など、日本の地方都市の郊外に「判で押した」ように見られる風景がよく描かれる。私たちがどっぷりと浸っている消費社会の産物が中心を占めるこれらの風景にはしかし、消費の主体である人の姿が見られない。そこに描き出されているのは、経済的価値を際限なく追求する資本主義の運動が、人間存在を駆逐してしまった「後の世界」、まさに「居抜き」の世界である。

画面全体を覆う静寂と緊迫感は、筆触の効果を排した作画法に因るところが大きい。木版画家であった祖父の作品を幼い頃から見て育った尾崎は、版画を通じて創作の世界に入った。コンピュータグラフィックスで描いた下絵に基づき、丹念に下地を施したキャンバスに、マスキングテープやカッティングシートマシーンを利用して色の領域ごとにかたどった孔版を置き、調色したアクリル絵具をステンシルの要領で塗っていく。デジタルとアナログの往還の中に版を介在させる独自の技法によって、人間が閉め出された「居抜き」の世界の、殺伐とした空気を醸し出している。

祖父から続く版画家の家系という「版」を踏襲し、資本主義のシステムが生み出す「版」の風景を、版画家としての実践において「版」自らに暴き出させる。こうして尾崎は、幾重にも「版」を生き抜く中で、「版」という存在が、私たちを取り巻く日常を、もう一つの世界へとつなげる「通路」となりうること、その大きな可能性を巧妙に示している。