大坂秩加

Osaka Chika

1984 東京都生まれ
Born in Tokyo

2009 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業 サロン・ド・プランタン賞
B.F.A. Tokyo University of the Arts Salon du Printemps Prize

2010 個展「シリアスとまぬけ」 シロタ画廊(東京)
Solo Exhibition,”Serious and bonehead” Shirota Gallery, Tokyo

シェル美術賞展2010 島敦彦審査委員賞 代官山ヒルサイドフォーラム(東京)
Shell art award 2010 Atsuhiko Shima Prize Daikanyama Hillside Forum, Tokyo

2011 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程版画専攻修了
M.F.A. Printmaking, Tokyo University of the Arts

個展「良くいえば健気」 GALLERY MoMo Ryogoku(東京)
Solo Exhibition “At Its Best, Valiant” GALLERY MoMo Ryogoku, Tokyo

2012 版の時間/Age of Prints展 女子美術大学アートミュージアム(東京)
Age of Prints Joshibi University of Art and Design Art Museum, Tokyo

シェル美術賞展 アーティストセレクション 国立新美術館(東京)
Shell art award Artist Selection The National Art Center, Tokyo

2013 個展「Sの外的要素たち」 GALLERY MoMo Ryogoku(東京)
Solo Exhibition, “S’s External Elements” GALLERY MoMo Ryogoku, Tokyo

アダチUKIYOE大賞2013 大賞
The Adachi Contemporary UKIYOE Award2013 Grand Prize

2014 VOCA展2014 佳作賞 上野の森美術館(東京)
The Vision of Contemporary Art 2014 Selected Prize The UENO Royal Museum, Tokyo

プリントって何?-境界を超えて- 市原湖畔美術館(千葉)
What is Print? -Beyond the Border- Ichihara Lakeside Museum, Chiba

2015 個展「おおさかるた」 GALLERY MoMo Ryogoku(東京)
Solo Exhibition, “Osakaruta” GALLERY MoMo Ryogoku, Tokyo

個展「ラブレター -いつだって片思い-」 MICHEKO GALERIE (ミュンヘン/ドイツ)
Solo Exhibition, “LOVE LETTER -Always One-way Love-” MICHEKO GALERIE, Munich, Germany

推薦文

推薦者:滝沢恭司(町田市立国際版画美術館学芸員)

文字をタイプしてクリヤファイルにバインドした作品や布にプリントしたインスタレーション作品などが1970年代の日本に登場して、版画はその形式が拡大解釈されるようになった。その後80年代に写真が美術作品として注目されると、「版」や「プリント」という概念で版画と写真を結びつけた作品が制作され、版画はますます拡大解釈されるようになった。また、ほぼ同時期にマキシグラフィカや山口啓介、キャリアのある画家や彫刻家らによって巨大な版画が制作され、版画はタブロー絵画と同等の身体的鑑賞に堪える表現能力を有する形式であることが実証された。こうした版画の形式や概念を押し広げつつ新しい版表現を模索する動きは、その痕跡を目立つかたちで歴史に刻み込んできた。今日でも形式の実験的試みと表現の関係を問う版表現の動向には注視する必要がある。なんといっても、この動向が日本独特の現代版画史の枠組みをつくってきたのだから。

リトグラフという版画の正攻法でつくられた大坂秩加の作品を、形式と表現の関係を問う版画の動向という文脈で見ることができるだろうか。作品の制作方法やその内容について考えていくと、そうした観点から見ることも決して無理なことではないように思えてくる。

まず形式に関連する彼女の版画の特殊性は、人や風景を絵のモティーフとするように、手帳や便せんに書いた実話に近い架空の物語を版画のモティーフとしていることにある。最近は物語のモデルとなる人物に直接書いてもらったというテキストもシルクスクリーンで刷り、リトグラフで制作した絵といっしょに展示しているという。その内容は脱力系だが、確かにありそうで、まじめな話しだ。その感覚を写した版画も、主人公にとっては切実な「こと」をあまり重くならないようにおかしみを誘いながら伝えている。作品にうかがえるこうした内容は、漫画やアニメ、ゲーム、アイドルなどに浸るオタクの文化とその社会現象とも少なからず結びついていそうだ。モバイルなどによる手軽な情報入手や、軽くてストレートなコミュニケーションが常態化した現代人一般の、社会との距離感が現れているようにも感じられる。

また、自由に作品に描き出されたお話は、物語と分離することを表現に求めたモダニズムの呪縛から解放された、ポスト・モダニズム時代の表現の在りようである。