小野耕石

Ono Kouseki

1979 岡山県倉敷市生まれ
Born in Okayama

2006 東京藝術大学修士課程絵画専攻版画科修了
MFA in printing, Tokyo University of Arts

2007 「第4回 犬島時間」 岡山県犬島 [’08’09’10’11’12’13’14’15] 4th Inujima Time Okayama [’08’09’10’11’12’13’14’15]

2009 個展 第3回「shiseido art egg」小野耕石展 古き頃、月は水面の色を変えた 資生堂ギャラリー(東京)
3rd shiseido art egg 「Those days, the moon changed the color of the water surface」 Ono Kouseki Shiseido gallery, Tokyo

個展「小野耕石展」 養清堂画廊(銀座) [’10’11’12’13’14’15] 「Kouseki Ono」 Youseido Gallery, Tokyo [’10’11’12’13’14’15]

「第2回 NBC シルクスクリーン版画ビエンナーレ」 大賞
2nd NBC Silk Screen Biennale Grand prize

2010 個展「小野耕石展 泳ぐ深閑 -映発」 奈義町現代美術館ギャラリー(岡山)
「Swimming Silence」 Nagi Museum of Contemporary Art, Okayama

2011 「Redefining the Multiple 13 Contemporary Japanese Printmakers」 Ewing Gallery(テネシー大学)
Redefining the Multiple 13 Contemporary Japanese Printmakers Ewing Gallery of Art & Architecture, The University of Tennessee, Knoxville

個展「小野耕石展 削柱移植」 アートフロントギャラリー(東京) [’09’13] 「Transplants」 Art Front Gallery, Tokyo

2014 「プリントって何? -境界を越えて-」 市原湖畔美術館(千葉)
「What is Print? – Beyond the Border」 Ichihara Lakeside Museum, Chiba

「I氏賞受賞作家展 よにんの素材が表現する“今”」 岡山県立美術館(岡山)
「Exhibition of the winners.Okayama Prefectural Mr.I Deveropment of Rising Artists Award」 Okayama Prefectural Museum of Art, Okayama

「Approaching Zero- At the Frontier of Contemporary Printmaking」 Kala gallery(サンフランシスコ)
Approaching Zero- At the Frontier of Contemporary Printmaking Kala gallery, San Francisco

2015 「VOCA賞2015」 VOCA賞
「THE VISION OF CONTEMPORARY ART 2015」 VOCA prize

個展「小野耕石展-版表現を切り開く者-」 あしやシューレ(兵庫)
「Kouseki Ono」 Galerie Ashiya Schule, Hyogo

推薦文

推薦者:太田三郎(美術家)

私が小野耕石の作品を初めて見たのは2010年1月、奈義町現代美術館のグループ展だったと記憶している。展示室のほか通路にも掛けられた作品は、ゆっくり歩いて観賞するとそれに応じて玉虫色のような微妙な輝きを発して魅力的だった。シルクスクリーンでインクの色を変えながら同じ版を100回重ね刷りすることもあるというその技法を聞き、まさしく版画であり、版画に対してこれほど正面から向きあう版画家も近年稀ではないかと思った。

同じ版を100回重ねて刷れば、インクの厚みによって立体的なマチエールが現われるであろうことは、シルクスクリーンの現場にいたことのない私でも容易に想像できる。しかしそれを実行する者はそうはいないだろう。美大生時代、蛾の鱗粉に魅せられて絵具でその輝きを再現しようとしたことが制作のきっかけだというが、重ねる色数やその順番、インクの盛り具合、ドットの角度などさまざまな試行錯誤があったであろう。そこには愚直な探求心があったと想像できる。

同年3月、初対面の私に自分は変態だと言ってはばからなかった小野は、大学卒業後も安定した仕事に就くことをせず、作品の売上でどうにか食べていると話した。所持金が残り僅かになると不思議なことにどこかから作品代が入るそうだ。あえて厳しい状況に身を置くことは作品にも影響を及ぼすのではあるまいか。

この文章を書いている私の横に、実はそのために小野から預かった作品がある。ヒトがつくったとは思えない、蜻蛉の眼や蝶の羽根の光沢を持つ、版画にしては巨大な作品。さて小野はこれからどう変わるのだろう? 昆虫の幼虫が成虫になる過程で形態を変える意味での、変態する小野耕石を見届けたいものである。