門馬英美
Momma Hidemi
1984 東京都生まれ
Born in Tokyo
2010 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コース修了
MFA, Musashino Art University, Tokyo
2009 第5回 CWAJヤングプリントメーカー賞
The 5th CWAJ Young printmaker Award
2013 第2回 CWAJアーティストインレジデンスプログラム・ノヴァスコシア美術デザイン大学に滞在(ハリファックス)
The 2nd CWAJ Artist-in-Residence Program Award, Nova Scotia College of Art and Design University, Halifax, Canada
「Terarrium note:2 版画3人展」 アスクエア神田ギャラリー(東京)
“Terarrium note: 2 Printmaking Group Exhibition” Asquare Kanda Gallery, Tokyo,
個展「Landscape, Time+Distance」 Anna Leonowens Gallery(カナダ)
Solo Exhibition “Landscape, Time+Distance” Anna Leonowens Gallery, Halifax, Canada
2014 コロラド大学のアーティストインレジデンスに参加(コロラド)
Artist-in-Residence, University of Colorado, Boulder, USA
第13回 南島原市セミナリヨ現代版画大賞展〈KTNテレビ長崎賞〉
The 13th Seminario Print Exhibition KTN TV Nagasaki Award
個展「Pause: Shifting the point of view」 University of Colorado, Boulder(コロラド)
Solo Exhibition “Pause: Shifting the point of view” University of Colorado, Boulder, USA
「版画系」 文房堂ギャラリー(東京)
“Hanga –Kei” Bumpodo Gallery, Tokyo
2015 第14回 南島原市セミナリヨ現代版画大賞展〈NCC長崎文化放送賞〉
The 14th Seminario Print Exhibition NCC Nagasaki Culture Telecasting Corporation Award
個展「Reflection」 かぐらざか五感肆パレアナ(東京)
Solo Exhibition “Reflection” Gallery Kagurazaka Gokansen Pareana, Tokyo
CWAJ版画展60周年記念大賞展 東京アメリカンクラブ(東京)
“The 60th CWAJ Print Show” Tokyo American Club, Tokyo
助手展2015 武蔵野美術大学助手研究発表
“The Research Associate Exhibition 2015” Musashino Art University Museum& Library, Tokyo
推薦文
推薦者:太田雅子(横浜美術館学芸員)
木々の間から零れ落ちる光、水面のゆらめき、風の吹き抜ける草原、朝日を浴びて目覚めゆく街並。人物はほとんど描かれないそれらの風景には、空間の奥行や広がりに対する、作家の尽きぬ興味が込められている。モチーフは全て、実際に門馬自身が見た風景だ。自分で撮影した写真をもとに作品のイメージを構想し、版を制作する。地層あるいは空気の層を重ねていくような感覚で色を刷り重ね、「遠近感があいまいになるような瞬間」を、そこに留めようとする。
学部二年まで油絵を専攻していた門馬だが、大学での授業をきっかけに、版を媒介にすることで自分の予期していたものとは異なるイメージが立ち現われる、版画の面白さに魅了されたという。作品の多くは一枚の版の中で、筆による描画と製版・刷りを繰り返すブロッキング法で制作されている。門馬にとってそのプロセスは、慣れ親しんだ油絵に近しい感覚でイメージを創り出すことができ、かつ版画の醍醐味も味わうことができるものだった。
モチーフとなる風景を選ぶ際には、感興の赴くままに任せるのではなく、シルクスクリーンで表現した時に、最も効果的に見せられるものであることを重視しているという。シルクスクリーン特有の均質なインク面。それが時に10版・20色以上も刷り重ねられることで、画面には複雑な凹凸が生まれ、また柔らかな光沢を放つようになる。多くの色を緻密に刷り重ねていくという手法は、どこか日本の多色摺木版画に近い。落ち着いたトーンの繊細な色の組み合わせは、母親の着ている着物の色に影響を受けたのかもしれないというが、門馬はカナダやアメリカでの滞在制作を経て、ビビッドな色を選択することが多い現地学生との色彩感覚の違いを、強く感じたという。
1960年代にポップアートの作家たちが見出してきたシルクスクリーンの魅力。それを日本的な色彩感覚や手法で使いこなすことによって、門馬は新たな風景表現の扉を開こうとしている。