三井田盛一郎
Miida Seiichirou
1965 東京都生まれ
Born in Tokyo
1992 ’92版画「期待の新人作家」大賞展 大賞受賞 りゅうインターナショナルギャラリー(東京)
The Most Promising Artist Grandpre Contest of Prints Grand Prize RYU INTERNATIONAL GALLERY, Tokyo
東京藝術大学卒業
B.F.A. Tokyo University of the Arts
1993 東京藝術大学大学院修士課程中退
Tokyo University of the Arts, Graduate School of Fine Arts[April – September 1993]
1996 第25回現代日本美術展 佳作賞受賞 東京都美術館・京都市美術館
The 25th Contemporary Art Exhibition of Japan, 1996 Prize for Fine Works Tokyo metropolitan Art Museum/Kyoto Municipal Museum of Art
1997 リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展[コミッショナー:針生一郎」(スロベニア)
International Biennale of Graphic Art 1997 Ljubljana, Slovenia
1998 VOCA展’98 上野の森美術館(東京)
VOCA/The Vision of Contemporary Art The Ueno Royal Museum, Tokyo
2000 次代をになうアーティスト達①三井田盛一郎展 町田市立国際版画美術館(東京)
Exhibition -MIIDA SEIICHIRO- Machida City Museum of Graphic Arts, Tokyo
2004 「日本の木版画100年展─創作版画から新しい版表現へ─」 名古屋市美術館“Ispa JAPAN NAGOYA”
“100 Years of Japanese woodcut print 1904-2004” Nagoya City Museum of Art
2009 三井田盛一郎展 尾道市立白樺美術館(尾道市)
EXHIBITION MIIDA SEIICHIRO SHIRAKABA Onomichi city museum
2010 個展 ─表面と振動─ アルスギャラリー(表参道)
EXHIBITION MIIDA SEIICHIRO ars gallery, Omotesando, Tokyo
2011 阿波紙と版表現展─凹版凸版─ 出品とディレクション 文房堂ギャラリー(神田神保町)
AWAGAMI and Print Expression 2011 BUMPODO gallery, Tokyo
2012 紙・非紙展 中国中央美術学院美術館(北京)
PAPER-UNPAPER MUSEUM of China Central Academy of Fine Arts
推薦文
三井田盛一郎の作品
推薦者:野田哲也(版画家)
三井田の作品は水性絵の具を使った日本の伝統木版画の技法によって摺られている。その形態は抽象的であるが、基本的には人間、あるいは自然の営みから発しているように思われる。木の切り株に宿った生命や木の平面に彫られた形態は雁皮紙を初め、楮紙などの和紙に水性木版画の技法によって摺り取られるが、そのプロセスを通して形態は消化され、和紙に摺ることによってしか得られない独特の、風合いのある、洗練された作品が生み出される。初期には上記の和紙に摺られた形態はコラージュされたり、また反立体的な作品にもなっていたが、最近は平面に徹し、墨を中心に藍や朱など、これまた日本の伝統を強く意識しながら、また同時に現代を強く意識しながらつくられている。
今回、三井田が出品作品に意図しているものは、抽象性の強いものだけではなく、具象的形態も取り入れながら、「絵画としての版画」と「書籍など印刷媒体としての版画」を考えたのだという。版画は本や出版のアイデアと切り離せないものというのである。
そういえば、浮世絵版画が挿絵本から発展して生まれたことも事実である。江戸時代、初め京都や大阪を中心に木版を使って出版された仮名草子、井原西鶴の「好色一代男」で知られる浮世草子など、大人の読み物には挿絵がつけられていた。この絵入り版本が一般庶民に広く人気を博したのはなぜだったのか。それは、そこにつけられた挿絵に強い説得力があったからでもあった。挿絵の彫られた刻線は素朴ではあっても、生き生きとした表現は本文以上に庶民の心を引きつけたのである。江戸では次第に町民に絵画愛好者が増え、その町人に答えるかたちで、一枚の版画としても鑑賞に堪えうる絵画、つまり浮世絵版画が生まれたのだった。
日本の伝統木版画を強く意識しながら作品に望む三井田がその原点に遡って版による絵画思考を試みていると思うと、納得のいくところである。