小出麻代

Koide Mayo

1983 大阪府生まれ
Born in Osaka

2009 京都精華大学大学院芸術研究科博士前期課程芸術専攻 版画分野 修了
MFA in printmaking, Kyoto Seika University

個展「mockmentary garden」 番画廊(大阪)
Solo Exhibition “mockmentary garden” BAN gallery,Osaka

2012 若手芸術家支援企画1floor2012 「TTYTT, -to tell you the truth,- 金井 悠、小出 麻代」 神戸アートヴィレッジセンター(兵庫)
Younger Artist Support Plan 1floor2012 “TTYTT, -to tell you the truth,- KANAI Yu, KOIDE Mayo” KAVC, Hyogo

2013 個展「すいこみ はきだし ひろがる」 LABORATORY(京都)
Solo Exhibition “breathe in, breathe out, pervade” LABORATORY, Kyoto

2014 個展「空のうえ 水のした 七色のはじまり」 the three konohana(大阪) 
Solo Exhibition “Above the sky, Under the water, The first 7 colours” the three konohana, Osaka

2015 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015(新潟)
The Echigo-Tsumari Art Triennial2015 Niigata

「まちの中の時間」ヤマガミユキヒロ、小出麻代、田中健作 A-Lab(兵庫)
“time in town” YAMAGAMI Yukihiro, KOIDE Mayo, TANAKA kensaku A-Lab, Hyogo

推薦文

小出麻代さんの作品について

推薦者:小吹隆文(美術ライター)

私が小出麻代さんの作品を初めて意識したのは、2009年に大阪の番画廊で行われた個展「mockmentary garden」である。それより前に2006年と2007年の「ART CAMP」(ギャラリーヤマグチクンストバウ/大阪)などで作品を見ているはずだが、残念ながら当時の記憶は判然としない。

番画廊で見た作品は、版画、額縁、日用品、レコードプレーヤー、ジオラマ用の小人形などを組み合わせたインスタレーションだった。なかでも、板パネル、車輪、人工芝の床、白い壁面から成る台車は秀逸で、台車上で小品群がそれぞれのメロディーを奏でながら、全体として一つのアンサンブルを形成していた。また、レコードプレーヤーを使った小品や、山の一部をプリントした複数のTシャツを壁に貼り大きな山の景色を出現させるアイデアも印象に残った。独立した小品を会場のあちこちに散りばめ、それらのアンサンブルが会場全体に反響して全景を成す。こうした個と全体の往還構造は、彼女の作品に一貫する大きな特徴である。

その後も何度か彼女の作品を見る機会を得たが、最も感銘を受けたのは2013年に京都のLABORATORYで行われた個展「すいこみ はきだし ひろがる」である。同展の作品も版画をはじめ様々な素材を組み合わせたインスタレーションだが、毛糸や電気コードが各ピースを結んでおり、線をたどりながら鑑賞することで一種の物語性や文学的詩情が得られるのだ。物語性といっても映像のように一直線の時間軸ではなく、鑑賞者は自由に見る場所を選び、行ったり来たりできる。つまり彼女の作品が元々持っていた個性を失うことなく、新たな魅力が加わったのである。

私は小出さんの作品が美術館の展示室に解き放たれる様を見たい。それが「PAT in KYOTO 京都版画トリエンナーレ2016」に彼女を推薦した理由だ。本展が「版画」と銘打ちながら自由な制作を保証している点も、小出さんにふさわしいと思った。彼女は一体どのような作品を見せてくれるのだろう。私も一観客として大いに期待している。