北野裕之

Kitano Hiroyuki

1972 京都生まれ
Born in Kyoto

1996 神戸アートアニュアル’96 神戸アートヴィレッジセンター
Kobe Art Annual 96’ Kobe Art Village center

1997 京都精華大学大学院 美術研究科 造形専攻(版画) 修了
M.F.A. Kyoto Seika University

1999 北斎の末裔達 -日本の現代版画 Grafikens Hus(マリーフレッド/スウェーデン)
Japanese Contemporary Printmaking Grand children of Hokusai Grafikens Hus, Sweden

2000 個展「Image・Photograph・Media」 ギャラリー池田美術(東京)
Solo Exhibition, “Image・Photograph・Media” Gallery Ikeda Bijyutu, Tokyo

2001 個展「Spotted Darkness」 ドン・ソーカー・コンテンポラリーアート(サンフランシスコ/アメリカ )
Solo Exhibition, “Spotted Darkness” Don Soker Contemporary Art, San Francisco, U.S.A.

2002 現在の兆候 ウィーン・アートセンター(オーストリア) 
Zeichen der Gegenwart Vienna Art Center, Austria

2003 ロードアイランド美術大学にて滞在制作 (プロヴィデンス/アメリカ)
Making works and conduct research Rhode Island School of Design, Providence, U.S.A.

2006 アートとともに 寺田小太郎コレクション 府中市美術館(東京)
with you, with Arts: Collection of Kotaro Terada Fuchu Art Museum, Tokyo

2007 レンブラントからティーホーまで -10年間の収集作品 サンフランシスコ美術館(アメリカ)
Rembrandt to Thiebaud: A Decade of Collecting Works on Paper Fine Arts Museums of San Francisco, U.S.A.

2008 マキシグラフィカ/ファイナル・ディスティネーションズ 京都市美術館
MAXI GRAPHICA / Final Destinations Kyoto Municipal Museum of the Art

2010 個展「Invisible Scenery」 MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w(京都)
Solo Exhibition, “Invisible Scenery” MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w, Kyoto

2014 ユトレヒト芸術大学(オランダ)及びカッセル芸術大学(ドイツ)にて滞在制作
Making works and conduct research Utrecht School of the Arts HKU, The Netherlands / Kunsthochschule Kassel, Germany

2015 個展「Light Room」 ユトレヒト芸術大学(オランダ)
Solo Exhibition, “Light Room” Utrecht School of the Arts HKU, The Netherlands

推薦文

推薦者:井上芳子(和歌山県立近代美術館学芸課長)

北野裕之にとって作家活動を始めた1990年代から一貫しているのは、写真による表現を追求していることである。彼の作品を見ると、版画とは、絵画と写真のあいだにあるものなのだと改めて気づく。

初期はテレビのスノーノイズ(砂嵐)を透明フィルムに写し取り、そのノイズの断片を筆でひとつずつかたどって紙に転写し、さらにスキージングを施した絵画とも写真ともつかないテクスチャーをもつモノタイプのシリーズ〈Spotted Darkness〉(1998~2004年)で注目された。

続いて発表された〈Star〉(2004~2005年)は夜空の星を写したゼラチン・シルバー・プリントに、黒・灰・白のドットを星のように書き加えたもので、写真だけでは物足りない闇の深さや、光の明るさを与えて見せた。その後も桜や雪を写した風景に、光に透けて見える花びらや光を反射する雪の印象を絵の具で加筆するシリーズが続いている。いずれも写真で写し取られたものと、自身が感じ取っているものとの関係を、光の様子に注意深く耳をすませるようにして身体的な手の動きを加え、問い続けてきたと言えるだろう。

そして今回、北野が発表するのは、半年間のドイツ・オランダ滞在中に制作された新作〈Light Room〉である。滞欧中、とりわけオランダの地形と気候がもたらす光の美しさは、彼が光について考える大きな力となったようだ。まずはじめはバスルームのタイルを写したもの。タイルの目地が矩形を織りなし、閉ざされた室内で反射する微細な光を捉えている。次にそのタイルの画像が切り取られ合成されていくのだが、彼は合成する土台として「Light Model」と呼ぶ、ジャバラ状に折った紙を自然光で写した画像を用意した。タイルがその角度や陰影に合わせて注意深く貼られていく。近づくと折り目の部分に紙の繊維が見え、それは画面の向こうに用意された支持体としての紙の存在を密かに主張している。重層的に仕組まれた光と影の表現は、彼の探求心を新たに展開させるものになった。