金光男

Kim Mitsuo

1987 大阪生まれ
Born in Osaka

2010 京都造形芸術大学情報デザイン学科先端アートコース卒業
B.A. Department of Information Design of Kyoto University of Art and Design

2012 京都市立芸術大学大学院美術研究科版画修了
M.A. Post graduate course of Kyoto City University of Arts

「第11回群馬青年ビエンナーレ」 群馬県立美術館(群馬)
“The 11th Gunma Biennale for Young Artists 2012“ The Museum of Modern Art Gunma, Gunma

「金光男個展」 日仏会館(東京)
“Mitsuo Kim solo exhibition“ the House of Japanese – France, Tokyo

「ANTEROOM PROJECT」 HOTEL ANTEROOM(京都)
“ANTEROOM PROJECT“ HOTEL ANTEROOM, Kyoto

「アートアワードトーキョー丸の内 2012」 行幸地下ギャラリー(東京)
“art award Tokyo marunouchi 2012“ Gyoko-dori underground Gallery, Tokyo

「row – thickness : KIM Mitsuo works」 Gallery PARC(京都)
“row – thickness : KIM Mitsuo works“ Gallery PARC, Kyoto

2013 「-apart-」 LIXILギャラリー(東京)
“-apart-“ LIXIL Gallery, Tokyo

「TAMA VIVANT 2013」 多摩美絵画東棟ギャラリー/パルテノン多摩(東京)
“TAMAVIVANT 2013“ Tama Art Univ., Tokyo

「CONTROL」 eN arts(京都)
“CONTROL“ eN arts, Kyoto

「わたしたちは粒であると同時に波のよう」 @KCUA(京都)
“We are particles of water, separate but for the wave in which we are one.“ @KCUA, Kyoto

「TOKYO FRONT LINE TRICK – DIMENSION」 TOLOT(東京)
“TOKYO FRONTLINE TRICK – DIMENSION“ TOLOT, Tokyo

「SWITCH」 AKI Gallery(台北/台湾)
“SWITCH“ AKI Gallery, Taipei, Taiwan

2014 「CONFUSION」 MA2Gallery(東京)
“CONFUSION“ MA2Gallery, Tokyo

「VOCA 2014」 上野の森美術館(東京)
“The Vision of Contemporary Art 2014“ The Ueno Royal Museum, Tokyo

「Darkroom/Ghost」 eN arts(京都)
“Darkroom / Ghost“ eN arts, Kyoto

「Beyond Memory」 MA2Gallery(東京)
Beyond Memory“ MA2Gallery, Tokyo

APERTO 01 金光男 「White light White heat」 金沢21世紀美術館(金沢)
APERTO 01 KIM Mitsuo “White light White heat“ 21st Century Museum of Contemporary Art Kanazawa, Kanazawa

2015 「石を、拾う」 MA2 gallery(東京)
“Pick up the Stone“ MA2 gallery, Tokyo

「藪の中」 Galerie Aube(京都)
“In A Grove“ Galerie Aube, kyoto

推薦文

クールの誕生:金光男の作品について

推薦者:森山貴之(横浜美術大学准教授)

金の作品に対面する時、いつも私は、モーダルとフリーのはざまで恐ろしいほどのテンションに満ちたトーンを響かせていた、1960年代のマイルス・デイヴィスを思い浮かべる。この音楽的感覚はなんだろうか。

金が制作する《row》シリーズは、シルクスクリーンのインクと支持体としての蝋の物質的特性が画面上で影響を及ぼしあい、観る者にイメージの質感を強く感じさせる。刷った画面がバーナーで部分的に溶かされ、それがイメージと巧みにシンクロしたノイズとなり、作品を構造的に把握しようとする私の視線を、蝋とインクが不安げに凝固している画面の現実へとたえず引き戻す。悟性的な視線を感性的な視線へと引き戻す、とでも言おうか。私はそうした金の制作プロセスを追体験し、スリリングなセッションを聴くのと同じ高揚感を覚える。

金が蝋にシルクスクリーンを施し熱で溶かすという手法を試みたのは、大学時代、支持体としてきわめて特性の強い蝋の塊に出会ったときからだ。当初、蝋にシルクを刷り熱すれば、蝋にインクが溶け込んでゆくと想像しながら制作したところ、蝋のみが溶けてインクは混じり合わず、刷られたイメージは文字通り「崩壊」し、表面にその痕跡をとどめたという。

そういえば、ギリシャ彫刻をモチーフにした作品や、近年の銀のインクによるシリーズ、あるいはインスタレーション作品においては、たしかに「崩壊」がより強調されているようにも見え、そこに象徴的な何かを想起することもできよう。

ただいずれにせよ金の作品は、蝋という生々しい素材を扱い、崩壊するイメージを、脆く、極めて静謐な画面へと定着させてゆく、その振る舞いのクールネスが圧倒的に美しく、リリカルなのだ、といえば十分だろう。

おそらく今後、金は新たな表現や素材の獲得のために苦しまなければならない時が来るだろう。しかし、どんな表現、どんな素材であろうとも、彼の根底にあるクールネスは、いま以上の愉悦を私たちに与えてくれるものと信じている。