加納俊輔

Kano Shunsuke

1983 大阪府生まれ
Born in Osaka

2010 京都嵯峨芸術大学大学院芸術研究科 修了
Graduated from Master Course at Kyoto Saga University of Arts (MFA)

2013 個展「バウムクーヘンとペタっとした表面」 Maki Fine Arts(東京)
Solo show “Baumkchen and Flat Surfaces” Maki Fine Arts, Tokyo

2013 「:No Subtitle」 HAGIWARA PROJECTS(東京)
Group show “:No Subtitle” HAGIWARA PROJECTS, Tokyo

2014 個展「ジェンガと噴水」 資生堂ギャラリー(東京)
Solo show “Jenga and Fountain” Shiseido Gallery, Tokyo

2014 個展「ファウンテンマウンテン」 Maki Fine Arts(東京)
Solo show “Fountain Mountain” Maki Fine Arts, Tokyo

2014 「これからの写真」 愛知県美術館(愛知)
Group show “Photography will be” Aichi Prefectual Museum of Art, Aichi

2014 「TOKYO 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #2」 yellow Koner pompidiou(パリ)
Group show “TOKYO 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #2” yellow Koner pompidiou, Paris

2015 「藪の中」 Galerie Aube(京都)
Group show “Yabu no naka” Galerie Aube, Kyoto

2015 上演「山びこのシーン」 京都芸術劇場 春秋座(京都)
Theatrical Performance “A scene of echo” Kyoto Art Theater Shunjuza, Kyoto

2015 個展「Cool Breeze On The Rocks」 Maki Fine Arts(東京)
Solo show “Cool Breeze On The Rocks” Maki Fine Arts, Tokyo

2015 「THE COPY TRAVELERS by THE COPY TRAVELERS」 NADiff gallery(東京)
“THE COPY TRAVELERS by THE COPY TRAVELERS” NADiff gallery, Tokyo

推薦文

推薦者:出原均(兵庫県立美術館学芸員)

デジタル技術によって画像のコピーが容易になった現代は、版(画)的な世界が限りなく広がりつつある時代といえる。したがって、写真を使って制作している加納俊輔の作品も広義の版の枠組みの中に入れることは許されるだろう。ただし、これは、彼を推薦した十全な理由ではない。彼の具体的な制作において版(画)的なものを述べようと思う。

板や大理石にテープやシールなどが貼られているように見えながら、実際はその様を撮った写真を板や大理石に貼り付けた加納の一連の作品は、オリジナルとコピーの差異を問いかけるものである。当然、この関係は、版と、版から起こされたものの関係と相似形であろう。この種の作品の場合、イメージのデジタル的な自在さにもまして、イメージと、それを支えるメディウムの関係に重きがある。とはいえ、もはやオリジナルとコピーとでは視覚上の差異はなく、メディウム上の差異でしかないといえるほどの、今日の倒立した状況を表すのだが。

これらの作品において、ものの表面に置かれたテープやシールなどのレイヤー(積層)が、オリジナルとコピーの区別の可能/不可能のカギとなっている。つまり、物理上と視覚上のレイヤーの置換が表現の要にあり、この種の作品の発展形としては、実際に、ひとつの作品の中で両者が錯綜するものまである。また、通常の写真や映像作品においても、加納は複数の被写体のレイヤーのあり方、あるいは、レイヤーの視覚的な現象に表現を見出している(ただし、彼のレイヤーへの関心は視覚的なものに限らず、時間やプロセスなどのそれもあることは指摘しておこう)。こうして、加納の作品にはレイヤーを組み込んだものが多く、この点で彼の版画的思考が確認できるのである。つまり、一般に複数の版による版画の場合、そのレイヤーが重要であり、その順序や組織化は、同じ平面の絵画以上であることがしばしばである。レイヤーの意識が彼を版画的世界に係留しているといえるのではないか。