金田実生

Kaneda Mio

1963 東京都生まれ
Born in Tokyo

1988 多摩美術大学大学院修了
M.F.A. Tama Art University

1994 クラクフ版画トリエンナーレ『ジャパニーズ プリントメイキング』 ギャラリーBWA(ポーランド)
International Print Triennial Krakow: Japanese Printmaking Gallery BWA, Poland

2001 Chiba Art Now ’01 絵画の領域 佐倉市立美術館(千葉)
Chiba Art Now ’01 Boundaries of Painting Sakura City Museum of Art, Chiba

2002-03 第1回府中ビエンナーレ ダブル・リアリティ 府中市美術館(東京)
The First Fuchu Biennial 2002 Double Reality Fuchu Art Museum, Tokyo

2003 美術館ワンダーランド 自然のなかで 安曇野市豊科近代美術館(長野)
In Nature Azumino Municipal of Modern Art, Toyoshina, Nagano

2004 大阪・アート・カレイドスコープ「OSAKA 04」 大阪府立現代美術センター・海岸通ギャラリー・CASO(大阪)
OSAKA・ART・KALEIDOSCOPE ‘OSAKA04’ Osaka Contemporary Art Center, Contemporary Art Space Osaka

2005 夏の蜃気楼 自然をうつしだす現代の作家たち 群馬県立館林美術館
Mirage on a Summer Day Reflections on Nature by Contemporary Artists Gunma Museum of Art, Tatebayashi

2005-06 トライ・ハート2006〔アートビート プロジェクト〕 富山県立近代美術館
Try Art 2006 ‘Heart Beat Project’ The Museum of Modern Art, Toyama

2007 平成17・18年度文化庁買上優秀作品 披露展 日本芸術院会館(東京)
Agency for Cultural Affairs Excellent Work Purchase of Fine Arts・Exhibition ’05-’06 The Japan Art Academy, Tokyo

2009 アーティスト・ファイル2009-現代の作家たち 国立新美術館(東京)
ARTIST FILE 2009 The National Art Center, Tokyo

推薦文

推薦者:黒川公二(戦後版画史研究)

金田実生の個展に初めて訪れたのは1999年、美術評論家の故・鷹見明彦からの案内状がきっかけであった。当時、美術館に在籍していた私は紙という素材にこだわり、「生」のイメージを描く金田の作品に強い関心を持ち、2001年のグループ展に出品をお願いした。洋紙の裏側に礬水(どうさ)をひき、水溶性クレヨンや油彩などで描いた作品は非常に微細な調子の表現であったため、印刷物にすると全く印象が異なってしまい、作品とは直接眼前で鑑賞するものなのだとあらためて気付かされた記憶がある。

金田は1993年頃から日々、植物の成長などを追ったドローイングノートを描いている。それらは植物の時間とその時々の自分の時間との差異を見つめるという意図があるらしい。膨大な素描はやがて一辺が1.6メートル位の紙を支持体とした作品へと昇華してゆく。それらの作品によって金田は国公立美術館での発表、作品収蔵といった評価を得ている。

昨年、金田は刷り師・加山智章との出会いから15年ぶりに版画制作を始めた。9月に本展用の試刷りを2点拝見したのだが、1点は仮題「マイナス1度」で、降雪後の明るい夜道をイメージした青い作品、もう1点は仮題「体温36度」で、人間の体温をイメージした青と赤の作品であった。即興的な素描と異なり、版画は計画性を重んじるものだと考えていた金田にとって加山との共同作業は新鮮な発見に満ちているようだ。この度の版画制作は紙との新しい可能性を模索する一つの手段であるのかもしれない。

金田は我々が日常の慌しさの中で忘れている、いや、目を逸らしているような事象をとおして生命の根源的な世界を追究している。この度の制作にあたって金田は、大作や奇抜な方法を考えることなく、普段通りにしたいと語った。奇抜さやアイデアばかりが先行している現在の美術界において、私はこの超マイペースな作家の歩んでゆく道程に今後とも注目してゆきたい。