門田 訓和

Kadota Kunikazu

1985 岐阜県生まれ
2009 武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業
2012 京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
2010 「NOTE」京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都
2011 個展「OPEN STUDIO」Sitterwerk/ザンクト・ガレン・スイス
2012 個展「before that」ARTZONE/京都
2015 「藪の中」Galerie Aube/京都
「これからの、未来の途中」京都工芸繊維大学美術工芸資料館
「群馬青年ビエンナーレ2015」群馬県立近代美術館
個展「whereabouts」武蔵野美術大学gFAL/東京
「93.「未来の途中」の先を夢見る。」ARTZONE/京都
2016 個展「physical time」Gallery PARC/京都
2017 「objet d’art 未来の途中」京町屋キャンパス ににぎ/京都
2019 「田中ストラット」小平市平櫛田中美術館/東京
「東風」武蔵野美術大学FAL, 東京造形大学CSギャラリー/東京
個展「Back to Back」HIGURE 17-15 cas/東京
「集合とバラバラ」はしっこ/東京
1985 Born 1985 in Gifu
2009 Bachelar of Art and Design in Sculpture, Musashino Art University, JP
2012 Master of Fine Arts in Sculpture, Graduate School of Arts, Kyoto City University of Arts, JP
2010  “ NOTE”, Kyoto City University of Arts Art Gallery @KCUA, Kyoto
2011 solo show “OPENSTUDIO”, Sitterwerk, St.Gallen/ Switzerland
2012 solo show “before that”, ARTZONE, Kyoto
2015 “The 12th Gunma Biennale for Young Artists 2015”, The Museum of Modern Art, Gunma
“On the Way to the Future, Museum and Archives”, Kyoto Institute of Technology, Kyoto
“Yabu No Naka, Galerie Aube”, Kyoto University of Art and Design, Kyoto
solo show “whereabouts”, Musashino Art University g-FAL, Tokyo
“93. Dream Ahead of the way to the future”, ARTZONE, Kyoto
2016 solo show “physical time”, Gallery PARC, Kyoto
2017 “objet d’art on the way to the Future”, Ninigi, Kyoto
2019 “Denchu Strut”, Kodaira Hirakushi Denchu Art Museum, Tokyo
“Tong-Poo”, Musashino Art Univercity FAL / Tokyo Zokei University CS Gallery, Tokyo

推薦文

この時代に プリントの可能性を

井関 悠(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)

門田訓和は、彫刻を起点としつつ紙を主な素材に作品を制作してきた。紙について、可塑的な素材であり不可逆かつ一時的なバランスの上にその形状が成立する、と語る門田は、自身がつくりだした紙のひとつひとつ形態 の瞬間を写真によって記録する。
彼の紙を素材とした作品の代表的なものとして、多重露出撮影により制作された《Color Paper》シリーズ(2011-)と《Abstract Paper》シリーズ(2016-)が挙げられる。本来、多重露出(多重露光)とは、フィルムを巻き上げずに複数カット撮影することで1枚の図像上にいくつものシーンを写し出す、フィルム時代における写真撮影技術のひとつとして確立されたものであった。1コマのフィルムに複数の像を写し込む、暗室作業時に1枚の印画紙へ複数のフィルムから焼き付けるなどの方法があり、現在ではフォトショップなどのPC画像処理ソフトでも同様の効果を得ることができるが、門田はデジタルカメラに備わる多重露出撮影機能を用いている。
門田は、写真という二次元的な平面のなかに紙の彫刻ともいえる三次元の立体を収めていく。色彩豊かな紙が、折り曲げられ、あるいは丸められて皺が伸ばされる。門田の作品は、一見それらを積み上げ、重ね合わせた状態を撮影したものであるかのように見えるが、実際にはその状態を撮影したものではなく、すべて彼の撮影プロセスによって導き出された仮構のイメージなのである。門田はカメラの前に紙片をひとつ配置し、多重露出でデジタルカメラの同一フレーム上へ撮影する作業を繰り返していく。この一連の門田の行為によって、多様な色彩と形態がひとつの画像のうえに積層されていくとともに、デジタルカメラの機械的な演算処理により色の重なりや図像の透過が導き出されていくのだ。
門田の関心は「作品制作における手法と技術に焦点を当てることで、プロセスの回復と、そこに生じる、ものを見るという眼差しの不確かさを導き出すこと」にあるという。門田の作品を前にして、私たちはその造形の不思議さに目眩のような感覚におそわれることだろう。あるいは素材・色彩・かたちの美しさに目をうばわれてしまうかもしれない。アナログな手法とデジタル技術の混成によって生みだされる門田の作品は、このふたつの技術の転換期にあるこの時代においてこそ創造され得るものいえるのではないだろうか。