吉岡 俊直

Yoshioka Toshinao

1972 京都府生まれ
1993 大学版画展  94, 95, 96年 <買上賞>(町田市立国際版画美術館)
1995 JACA ’95日本ビジュアル・アート展 <銀賞> (伊勢丹美術館 他)
1997 クラコウ国際版画トリエンナーレ <審査員特別賞>(ポーランド)
京都市立芸術大学 大学院 修了
1998 神戸アートアニュアル(神戸アートビレッジセンター)
1999 第四回高知国際版画トリエンナーレ展 <佳作賞>(高知/いの町紙の博物館)
2000 新鋭美術選抜展2000(京都市立美術館)
2001 VOCA展 (上野の森美術館)
2004 現代版画の潮流展 (町田市立国際版画美術館、松本市美術館)
2007 水のかたち(茨城県近代美術館)
2008 MAXI GRAPHICA / Final Destinations (京都市美術館)
2009 アート&テクノロジー (京都工芸繊維大学 美術工芸資料館)
2012 Redefining the Multiple(アメリカ/Tennessee/Ewing Gallery)
2014 拡張する地平(中国/広州/53美術館)
2016 Multiply それぞれの地点より燐光する地点(京都/ギャラリーフロール)
2017 「Stone Letter Project ー石からの手紙  (神戸/Gallery TRI-ANGLE)
2019 複眼と対象のノード(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA)
1972 Born in Kyoto, Japan.
1993 “The University Students’ Prints Exhibition” Machida City Museum of Graphic Arts, Tokyo
works being purchased by the same museum (’94~’96)
1995 “The Japan Visual Art Exhibition ’95 ” Silver Prize.
1997 “International Print Triennial ’97 – Cracow” Special Prize.
Completed Graduate School of Kyoto City University of Arts, Painting Department.
1998 “KOBE Art Annual/Thinking Visuals” Kobe Art Village Center.
1999 “KOCHI INTERNATIONAL TRIENNIAL EXHIBITION OF PRINT” Fourth Prize.
2000 “Art Exhibition of Selected New Artists2000” Kyoto Municipal Museum of Art.
2001 “The Vision of Contemporary Art 2001” The Ueno Royal Museum,Tokyo.
2004 “Trend of Print making” Machida City Museum of Graphic Arts,Tokyo. Matusmoto Art Museum, Nagano.
2007 “Shape of Water” The Museum of Modern Art, Ibaraki.
2008 “MAXI GRAPHICA / Final Destinations” Kyoto Municipal Museum of Art.
2009 “Art & Technology” Museum And Archives, Kyoto Institute of Technology.
2012 “Redefining the Multiple” Ewing Gallery, Tennessee, USA.
2014 “The Expanding Horizon/Japan-China contemporary art exhibition” 53 art museum, Guangzhou, China.
2016 “Multiply” Gallery Fleur, Kyoto.
2017 “Stone Letter Project” Gallery TRI-ANGLE, Kobe.
2019 “NODE of Compound Eye and Symmetry” Kyoto City University of Arts ART GALLERY.

推薦文

崩れゆく情景

中馬泰文

災害の報道で、山肌が一瞬にして崩壊したり、氾濫した水が怒涛の勢いで周辺を削り取っていく映像をよく見る。
そして、一度失われた風景は二度と復元されることはなく人々の記憶からも消えていく。
ふと、こんなことを書く気になったのは、吉岡俊直の最近の作品を見たときに感じたことからの印象と重なったからだ。
自然ではなく、人為によって情景を溶解させ元の形態を消し去ろうとする意志をそこに感じたからだ。
その意思は何に起因するのだろう。
この一瞬も留まることのない時間や自然への虚しい抵抗とも思える営為は、もしかしたら、潜在意識の底に澱のように溜まっている不安や恐れからの逃避というより挑戦のように思える。それを表現するのに紙や布は不適のか、
扱いにくいゴムの支持体にシルクスクリーンで仕上げている。敢えて画像の可塑性を反復力と粘着感がそれを補うのだろう。
もう一つ彼の活動で興味ある制作がある。
石版画の可能性を探るという展覧会に出品されていたかれの小作品に惹かれたのは、明らかに異質な技法が一際存在感を放っていたからだ。
直接訊ねてみると、それは版画の原点ともいえる石版の従来の伝承的技法とその成熟を嘲笑うような斬新な技法だった。
それは石版(石灰石)にアラビアゴム液を一面に塗り詰め、乾いた状態の原石にコンピュータを介してレーザー光線で焼ききる方法だ。皮膜状になったアラビアゴム液の焼き切れ跡は石の表面が露出する。この痕跡にチンクターを塗り込めば原版が出来上がる。無論コンピュータを介しているので写真製版状態の画像も再現されるのだ。これを刷りあげればリトグラフが仕上がる。面倒なアカデミックな製版技法から、自らを解放して自由な世界を創出したということなのか、版そのものの意味さえ変えてしまったようだ。
先のゴム状被膜の弾力性、粘着性、柔軟性とは異なるのは、かれがこだわる皮膜感覚にその理由がありそうだ。

※ チンクター(アスファルト粉末・蜜蝋などをテレピンなどの溶剤で溶かした液体)