坂井淳二

Sakai Junji

1971 香川県生まれ
Born in Kagawa

1995 大阪芸術大学美術学科卒業
M.F.A. Osaka University of Arts

1996 個展 番画廊(大阪)[’97、’00、’02、’03、’04、’05、’06、’07、’09、’10、’12)
Solo Exhibition Ban Gallery, Osaka [’97, ’00, ’02, ’03, ’04, ’05, ’06, ’07, ’09, ’10, ’12]

2002 大田国際版画展 Daejeon jung-gu Cultural Center Gallery(大田/韓国)
International Printmaking Exhibition in DAEJEON 2002 Daejeon jung-gu Cultural Center Gallery, Daejeon, Korea

2004 関西現代版画の開拓者と新世代達『版画の力』展 京都府京都文化博物館
The Innovators and the New Generation of Contemporary Kansai Printmakers “The Power of Printmaking” The Museum of Kyoto

2008 BUSAN BIENNALE “Art is Now” Busan city hall(釜山/韓国)
BUSAN BIENNALE ‘Art is Now’ Busan city hall, Busan, Korea

2009 個展「Shape of the Moon」 アートフロントグラフィックス(東京)
Solo Exhibition, “Shape of the Moon” Art Front Graphics, Tokyo

2011 個展「Lluna plena de febrer」 galeria esther montoriol(バルセロナ/スペイン)
Solo Exhibition, “Lluna plena de Febrer” galeria esther montoriol, Barcelona, Spain

個展「玄月」 小島びじゅつ室(東京)[’07]
Solo Exhibition, “Lluna negra” Kojima Art Laboratory, Tokyo

2012 Biennale Internationale de Casablanca 2012 Attijariwafa bank’s exhibition gallery(カサブランカ/モロッコ)
Biennale Internationale de Casablanca 2012 Attijariwafa bank’s exhibition gallery, Casablanca, Moroco

ブラインドサイト─盲視の知覚─ MA2ギャラリー(東京)
“Blindsight” MA2 Gallery, Tokyo

International Print Triennial Krakow 2012 Katowice Rondo Sztuki(カトヴィツェ/ポーランド)
International Print Triennial Krakow 2012 Katowice Rondo Sztuki, Katowice, Poland

推薦文

推薦者:奥村泰彦(和歌山県立近代美術館教育普及課長)

坂井淳二は、抽象的な形にもとづく作品を作り続けている。ここ数年は、正方形を基本的な造形の単位とした作品を多く試みていたが、近年はそこに菱形が加わっている。正方形の画面をいくつかの正方形で区切ったり、あるいは同じ正方形の画面の中央に十字を配した構図は、作家に対して造形の絶対性を追求しているといった評価を与えてもおかしくないものだろう。だが、彼の作品からは、形による主張といったものはさほど強く感じられず、不思議なほどである。どうも坂井は、形によって画面を分節化し、その分節化を通して何ごとかを表現する作品の成立を図るといった考え方で制作しているのではないようだ。だから、十字の形がキリスト教の象徴を想起させないのは措くとしても、正方形の連続から厳格さを連想したり、あるいは逆に市松模様のリズミカルさを感じさせるといった評言が、不適当と思わせるのである。

画面の上の形は、もちろん作品を分節化するものではあるが、それ自体が何らかの表現のために描かれたものではなく、作品を生む契機として、まず画面の分節化が行われているようだ。画面を区切ることから描かれることが始まる。しかしまた彼の描く画面は、一見すると、その分節化された形に依拠するのではなく、区切られたそれぞれの枠の中を同じ調子で塗り込めているようにも見える。インクが乾かないうちに刷るという制作方法から生まれる画肌の質感は、制作作業も含めた肉体の感触を印象づける。そこでマチエールの美しさに酔うこともできるだろうが、それを制止するのが画面上の形である。

造形的には単純とも思える作品だが、形と色面とのこのような相互のかけひきが、表現を探り続けて動いている印象をもたらしている。画面上での探求を見続けたくなる作家の一人である。