大西伸明

Onishi Nobuaki

1972 岡山県生まれ
Born in Okayama

1998 京都市立芸術大学大学院美術研究科版画修了
M.F.A. Printmaking, Kyoto City University of Arts

2008 個展「LOVERS LOVERS」 入善町下山芸術の森・発電所美術館(富山)
Solo Exhibision, “LOVERS LOVERS” Nizayama Forest Art Museum, Toyama

2009 個展「垂直集め」 アートギャラリーC・スクエア(愛知)
Solo Exhibision, “Vertical Collection” Art gallery C-Scuare, Aichi

2010 「内在の風景」 WEST SPACE(メルボルン)
“Immanent landscape” WEST SPACE, Melbourne

個展「新しい過去」 MA2ギャラリー(東京)
Solo Exhibision, “NEW PAST” MA2gallery, Tokyo

2011 個展「Nobuaki Onishi Exhibition」 Georgia Scherman Projec(トロント)
Solo Exhibision, “Nobuaki Onishi Exhibition” Georgia Scherman Project, Toronto

「内在の風景」 小山市立車屋美術館(栃木)
“Immanent landscape” Kurumaya Museum of Art, Tochigi

個展「UNTITLED」 兵庫県立美術館
Solo Exhibision, “UNTITLED” Hyogo Prefectural Museum of Art, Hyogo

「Okazaki/Onishi/Object[2]」 MA2gallery(東京)
Okazaki/Onishi/Object[2] MA2gallery, Tokyo

2012 個展「Through」 ギャラリーノマル(大阪)
Solo Exhibision, “Through” Gallery Nomart, Osaka

「自由になれるとき・現代美術はおもしろい」 岡山県立美術館
“What a Wonderful Comtemporary Art” The Okayama Prefectural Museum of Art, Okayama

第23回五島記念文化賞 美術部門新人賞受賞
23th Goto Memorial Cultural Award for New Arttist

推薦文

推薦者:太田垣實(美術評論家・大阪成蹊大学芸術学部教授)

版画の基本的な要素は、版による転写や複数制作にある。木版、銅版、リト、シルクと技法はさまざまでも版を介した印刷と、一点だけでない複数の制作は共通する。大西伸明は、版画表現の転写や複製という側面を、積極的に受け入れ、そのよりどころとしての手法を徹底した先端的な創作を展開している新鋭作家だ。

大西は初期のころ、自分でつくったオブジェを銅販に写真製版し、画面に均等に配置、連続させるといった作品を発表、反復と連続の過程で生じる微妙な差異を面白く見せる表現を試みていた。やがてオブジェをつくる過程で出合った樹脂に興味を抱くようになり、日常の身近にある、さまざまなものをシリコンで型どりしたあと樹脂成形し、実物そっくりに手彩色、一部分だけ色づけせずにおく手法で、実際のものではなく複製の作り物であることを見る者に気付かせる作品へシフトしていった。

蚊取り線香やカニの甲羅、電球、磁石といった日常身近な小物から、防波堤保護のテトラポッド、作業用の脚立、さらには高さ数メートルの自然の雑木といった大物まで、型どりして成形し、綿密に彩色した、実物そっくりの造形が、実物を転写してつくった立体さながらに多様に創出されてきた。最近は日常ありふれた何でもないものや、彫刻や静物が壊れて破片になって散らばる状態まで「転写」再現したり、銅版画で刷ったモノクロームのモンキアゲハ蝶の群れが大量に群れて飛び立つ幻想的な光景を創出したこともある。

版画の転写や複製の問題意識を鋭く掘り下げ、オリジナルとコピーに絡む現代美術表現の根源的な位相に据えながら、先鋭的な表現を探求している大西の取り組みは、意表を突く面白さやときに居心地の悪いショッキングさも織り交ぜつつ、新たな可能性への期待を抱かせずにはおかない訴求力をもっている。